インフレとマネーストック#

in English or the language of your choice.

import japanize_matplotlib
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
import pandas as pd
import py4macro
import statsmodels.formula.api as smf

# numpy v1の表示を使用
np.set_printoptions(legacy='1.21')
# 警告メッセージを非表示
import warnings
warnings.filterwarnings("ignore")

はじめに#

前章に続けて、経済の「真のメカニズム」の反映としてデータに現れる何らかのパターンを考察する。 ここでは、マネーストックとインフレーションとの関係に着目しデータの特徴を考える。

この2つの変数の関係を示す考え方として、貨幣数量説があり、次式で表される。

(111)#\[ P_tY_t=M_tV_t \]
  • \(P_t\):一般物価水準

    • ある期間(1年間)で取引された財の集計物価水準

  • \(Y_t\):実質支出(GDP)

    • ある期間(1年間)で取引された財に対する実質支出額

  • \(M_t\):マネーストック

    • ある期間(1年間)平均で流通した貨幣量

  • \(V_t\):貨幣の流通速度

    • ある期間(1年間)平均で貨幣1単位が何回使用されたかを示す

(111)に対数を取り時間微分すると次式となる。

(112)#\[ \pi_t+g_t=m_t+v_t \]

ここで

  • \(\pi_t=\dfrac{\dot{P}_t}{P_t}\):インフレ率

  • \(g_t=\dfrac{\dot{Y_t}}{Y_t}\):実質GDPの成長率

  • \(m_t\equiv\dfrac{\dot{M}_t}{M_t}\):マネーストックの増加率

  • \(v_t=\dfrac{\dot{V}_t}{V_t}\):貨幣の流通速度の変化率

(111)は恒等式であり,式(112)も常に成り立つ関係である。ここで長期均衡を考えてみよう。GDPは供給サイドで決定され,成長率は一定(\(g_t=\overline{g}\))としよう(ソロー・モデルを考えてみよう)。更に貨幣の流通速度は一定とする。この仮定のもと式(112)は次式としてまとめることができる。

(113)#\[ \pi_t = m_t-\overline{g} \]

この式によると,長期的なインフレ率はマネーストックの増加率によって決定される。この節では,式(113)の予測がデータと整合的かどうかを議論する。次の2つのデータ・セットを使いこの問題を考察する。

  • 日本の時系列データ

  • 世界経済のパネル・データ

手法としては散布図と回帰直線の傾きに基づいて正の相関があるかを考える。

日本の時系列データ#

説明#

py4macroにはjpn-moneyというデータ・セットが含まれており,その内容は次のコードで確認できる。

py4macro.data('jpn-money', description=1)
    | `cpi`: 消費者物価指数
    |   * 2015年の値を`100`
    |   * 季節調整済み
    | `money`: マネーストック(M1)
    |   * 2015年の値を`100`
    |   * 季節調整済み
    |
    | * 月次データ
    | * 1955年1月〜2020年12月
    |
    | <出典>
    | OECD Main Economic Indicators

1955年1月から2021年4月までの月次データであり,消費者物価指数とマネーストックの2つの変数が含まれている。マネーストックにはM1が使われており,現金通貨と要求払預金(預入期間の設定がなく自由に出し入れができる預金のことであり,普通預金が典型的な例)で構成される。詳しくはマネーストック統計の解説を参考にしてほしい。M1を使う大きな理由は長い時系列データが存在することであり,長期的な関係である式(113)を考えるには適しているためである。

一方で長い時系列データであれば長期的な関係を捉えることができるという訳ではない。ここでの長期的な関係とは,ある作用が発生した後,その効果が現れるのに時間が掛かるという意味である。例えば,今日マネーストックの増加率が上昇したとしても,明日すぐにインフレ率の上昇につながるという訳ではなく,その効果が浸透しデータの数字に現れるまで数ヶ月掛かる事になる。この点を示すために次のステップで進めることにする。

  1. 月次データを変換して次のデータを作成する。

    • 四半期データ

    • 年次データ

    • 1期を3年とするデータ(ここでは「3年次データ」と呼ぶ)

  2. 月次データを含む4つのデータ・セットを使い,2変数の散布図と回帰分析をおこなう。

resample()#

まず四半期データへの変換を考えよう。1四半期には3ヶ月の値があり,その平均を1四半期の値とする。同様に,年次データおよび3年次データに変換する場合は,12ヶ月間もしくは36ヶ月間の値を使い平均を計算することになる。このような計算は「連続的な時系列のグループ計算」として捉えることができる。グループ計算のメソッドにgroupbyがあるが,カテゴリー変数に基づいてグループ分けするので,この問題に使うことはできない。その代わりに,時系列用グループ計算メソッドとしてresampleが用意されている。ここではresampleの使い方を紹介するが,異なる方法として移動平均を使うことも可能であり,興味がある人はこちらを参照してみよう

Note

resampleはグループ計算だけではなく,その「逆の計算」もすることができるがここでは触れない。以下では,「時系列グループ計算用」としてのみ考える。

resampleの使い方を説明するために,次のDataFrame(変数名はdf_ex)を考えよう。

Hide code cell source
date_index = pd.date_range('2019-01-01','2020-12-01', freq='MS')
df_ex = pd.DataFrame({'X':list( range(10, 120+1, 10) )*2,
                      'Y':np.random.normal(5, 1, size=12*2)
                     }, index=date_index)
df_ex
X Y
2019-01-01 10 4.576824
2019-02-01 20 5.342959
2019-03-01 30 1.029225
2019-04-01 40 3.951499
2019-05-01 50 4.262111
2019-06-01 60 4.173114
2019-07-01 70 6.296597
2019-08-01 80 5.009432
2019-09-01 90 6.255001
2019-10-01 100 5.079241
2019-11-01 110 5.421630
2019-12-01 120 3.653163
2020-01-01 10 4.003482
2020-02-01 20 5.693810
2020-03-01 30 6.169642
2020-04-01 40 5.438817
2020-05-01 50 4.226490
2020-06-01 60 5.157529
2020-07-01 70 5.763059
2020-08-01 80 5.941774
2020-09-01 90 5.855858
2020-10-01 100 5.286150
2020-11-01 110 3.540716
2020-12-01 120 3.837402

df_exには時系列用の行ラベルがが使われており,毎月の最初の日がラベルとなっている。列Xには10から120までの整数が昇順に並んでおり,Yにはランダムは値が並んでいる。

2つのステップに分けて説明する。

ステップ1:グループ化の期間を指定する
最初のステップでは,グループ化する期間を引数として.resample()を実行する。指定する期間は次のように文字列として指定する。

  • YS:1年を基準としてグループ化(YyearSstart of the periodを表している)

  • QS:四半期を基準としてグループ化(QquarterSstart of the periodを表している)

  • MS:1ヶ月を基準としてグループ化(MmonthSstart of the periodを表している)

    • 3ヶ月であれば3MS,1年であれば12MSとできる。

グループ化の期間を示す引数には様々なものがあり、このサイトを参考にすると良いだろう。

df_exを四半期でグループ化するには次のようになる。

df_ex.resample('QS')
<pandas.core.resample.DatetimeIndexResampler object at 0x113942810>

このコードはDataFrameを返すわけではない。返すのは時系列グループ計算用のオブジェクトであり,それを使ってグループ計算をおこなう事になる。

ステップ2:計算内容を指定する。
どのような計算をしたいかを指定する。ここではメソッド.mean()を使って指定した期間内の平均を計算してみよう。

df_ex.resample('QS').mean()
X Y
2019-01-01 20.0 3.649669
2019-04-01 50.0 4.128908
2019-07-01 80.0 5.853677
2019-10-01 110.0 4.718011
2020-01-01 20.0 5.288978
2020-04-01 50.0 4.940945
2020-07-01 80.0 5.853564
2020-10-01 110.0 4.221422

行ラベルには四半期の最初の日が使われている。列Xに並んでいる数字から,毎四半期の期間内平均であることが確認できる。

次のコードは年平均を計算している。

df_ex.resample('YS').mean()
X Y
2019-01-01 65.0 4.587566
2020-01-01 65.0 5.076227

平均以外にも様々な計算ができるようになっている。py4macroモジュールに含まれるsee()関数を使って属性を調べてみよう。

py4macro.see(df_ex.resample('YS'))
.X                  .Y                  .agg                .aggregate
.apply              .asfreq             .ax                 .bfill
.binner             .count              .ffill              .fillna
.first              .get_group          .groups             .include_groups
.indices            .interpolate        .kind               .last
.max                .mean               .median             .min
.ndim               .nearest            .ngroups            .nunique
.ohlc               .pipe               .prod               .quantile
.sem                .size               .std                .sum
.transform          .var

主なメソッドとして次を挙げることができる(これらの計算で欠損値は無視される)。

  • mean():平均

  • median():中央値

  • max():最大値

  • min():最小値

  • std():標準偏差

  • var():分散

  • sum():合計

  • first():最初の値

  • last():最後の値

  • count():要素数

このリストにない計算をしたい場合は,上のリストにある.agg()(aggregate()も同じ)を使いNumPyや自作の関数を指定することができる。例えば,変動係数(coefficient of variation)を計算したいとしよう。

def cv(x):
    
    return x.std() / x.mean()

この関数のxは,時系列グループ計算で取り出されたSeriesもしくはDataFrameと考えれば良いだろう。使い方は簡単で,.agg()の引数としてcvを指定するだけである。

df_ex.resample('YS').agg(cv)
X Y
2019-01-01 0.5547 0.305487
2020-01-01 0.5547 0.181653

Warning

.agg()の引数はcvでありcv(x)ではない。関数名だけを.agg()に渡し,.agg()が渡された関数を実行するというイメージである。cv(x)を引数に使うと,cv(x)を実行した結果.agg()に渡すことになりエラーとなってしまう。

データの作成#

では実際にjpn-moneyのデータを使いデータを整形しよう。まず月次データを読み込みmonthに割り当てる。

month = py4macro.data('jpn-money')
month.tail()
cpi money
2020-08-01 102.026510 147.486589
2020-09-01 101.526496 148.714911
2020-10-01 101.293089 149.341961
2020-11-01 101.346909 150.335605
2020-12-01 101.231809 151.327058

いつもの通り.info()を使ってデータの内容を確認しよう。

month.info()
<class 'pandas.core.frame.DataFrame'>
DatetimeIndex: 792 entries, 1955-01-01 to 2020-12-01
Data columns (total 2 columns):
 #   Column  Non-Null Count  Dtype  
---  ------  --------------  -----  
 0   cpi     792 non-null    float64
 1   money   792 non-null    float64
dtypes: float64(2)
memory usage: 18.6 KB

行ラベルがDatetimeIndexとなっており,時系列データ用に設定されていることが分かる。

四半期データに変換して変数quarterに割り当てることにする。

quarter = month.resample('QS').mean()

これで3ヶ月の値の平均からなる四半期データを作成した事になる。確かめてみよう。

quarter.head()
cpi money
1955-01-01 17.243521 0.347656
1955-04-01 16.867311 0.357257
1955-07-01 17.036744 0.384201
1955-10-01 16.873758 0.400080
1956-01-01 17.115098 0.394544

四半期の最初の日が行ラベルになっていることが分かる。同様に,年次データ作成しよう。

annual = month.resample('YS').mean()
annual.head()
cpi money
1955-01-01 17.005334 0.372299
1956-01-01 17.072603 0.424722
1957-01-01 17.601583 0.478435
1958-01-01 17.517496 0.505580
1959-01-01 17.707073 0.588486

1年の最初の日が行ラベルになっている。次に3年次データを作成しよう。

annual3 = month.resample('3YS').mean()
annual3.head()
cpi money
1955-01-01 17.226506 0.425152
1958-01-01 17.854861 0.599932
1961-01-01 20.666763 1.039100
1964-01-01 24.291933 1.641735
1967-01-01 28.080477 2.570458

行ラベルは3年間の最初の日になっている。

次にインフレ率とマネーストックの増加率の変化を計算し,新たな列としてそれぞれのDataFrameに追加しよう。増加率の公式に従ってコードを書いても良いが,DataFrameのメソッド.pct_change()を紹介する。これは名前が示すように(percent changeの略)列の変化率を計算するメソッドである。ここで注意が必要な点は,.pct_change()はデフォルトで前期比の増加率を返す。例えば,次のコードはcpiの前月と比べた増加率を計算している。

month.loc[:,'cpi'].pct_change()

同年同期比の増加率を計算したい場合は,12ヶ月前の値と比べたいので引数に12を指定すれば良い。例として,quartercpiの同年同期比のインフレ率を計算する場合は次のようになる。

month.loc[:,'cpi'].pct_change(4)

以下では,デフォルトで.pct_change()を使い計算する。

df_lst = [month, quarter, annual, annual3]

for df in df_lst:
    
    df['inflation'] = df.loc[:,'cpi'].pct_change()
    df['money_growth'] = df.loc[:,'money'].pct_change()

monthを確認してみよう。

month.head()
cpi money inflation money_growth
1955-01-01 17.224688 0.347029 NaN NaN
1955-02-01 17.358845 0.350938 0.007789 0.011264
1955-03-01 17.147029 0.345003 -0.012202 -0.016910
1955-04-01 16.954310 0.353125 -0.011239 0.023541
1955-05-01 16.713945 0.354401 -0.014177 0.003613

1955-01-01inflationmoney_growthの値はNaNとなっている。これは前期の値がないためである。

散布図とトレンド線#

forループを使ってOLSの計算とプロットを同時におこなおう。

title_lst = ['月次データ','四半期データ','年次データ','3年次データ']       #1

for df, t in zip(df_lst,title_lst):
    
    res = smf.ols('inflation ~ money_growth', data=df).fit()        #2
    df['トレンド'] = res.fittedvalues                                #3
    
    ax_ = df.plot.scatter(x='money_growth', y='inflation')          #4
    df.sort_values('トレンド').plot(x='money_growth', y='トレンド',    #5
                                   color='r', ax=ax_)               #6
    ax_.set_title(f'{t}\n'                                          #7
                  f'スロープ係数:{res.params[1]:.3f}\n'               #8
                  f'p値:{res.pvalues[1]:.3f}\n'                     #9
                  f'調整済み決定係数:{res.rsquared_adj:.3f}',         #10
                  size=18, loc='left')                              #11
_images/37dcd71c6ed28f7d5427be4c83cd40be87807d611fef327cc0e1e9500253b205.png _images/19b2ca655dd9a4f8c4ac69c89a6953f93b6020679f0e295a3ccf053e95b5bc49.png _images/443e574ef303fae1018e59637e0350a172968d00dbddeb48d7fe441e039a6633.png _images/cc0404daecd83e7dcf60bbb76ad588d30f953a8ed7f4b598502f8ffbd7e17414.png

上の図とOLSの推定結果から次のことが分かる。

  • 全てのケースで統計的優位性は高い。

  • データの期間が長くなるとともに,スロープ係数の値が増加し,調整済み決定係数も高くなっている。

これらのことからマネーストックの変化の影響は,より長い期間をかけてインフレへの影響が発生していることが伺える。この結果は,式(113)は長期的に成立することと整合的であると言えそうだ。

一方で,式(113)は係数が1になることを予測しているが,上の4つのケースの係数は全て1よりも低い値となっている。この点を念頭に,次の節では日本だけではなく170国以上のデータを使い,問題を再検討することにする。また,OLS結果は因果関係を示しておらず単なる相関関係を表していることは念頭に置いておこう。

Note

4つの図の縦軸・横軸の値を比べると,データが長くなるにつれて値が大きくなることがわかる。期間が長くなるとcpiM1の増加率も上昇するためである。注意してほしいのは,増加率が上昇したために正の相関が強くなったという訳ではなく,増加率がより高くなっても正の相関は弱いまま,もしくは相関が存在しない場合もあり得る。図が示しているのは,データの期間が長くなるとより強い正の相関が「炙り出される」ということである。

世界経済のパネルデータ#

説明#

前節では日本のデータを使い,インフレ率に対するマネーストック増加率の影響が現れるには時間が掛かることを示した。一方でトレンド線の傾き(回帰分析のスロープ)は1よりも小さいが,式(113)は線形であり,\(m_t\)の計数は1である。即ち,マネーストックの増加率が1%上昇するとインフレ率も1%増加するという予測である。データと理論予測の齟齬をどう考えれば良いだろうか。一つの問題はノイズである。年次データであっても3年次データであってもその期間に短期的なありとあらゆるランダムな要素(ノイズ)が含まれている。ノイズは正や負の両方の影響があると考えられ,その分変化が激しいと思われる。長期的な関係は,正と負の影響が相殺し,その結果残った関係と考えることができる。この考えをデータで捉えるためにデータ全体の平均を計算すれば良いことになる。しかし前節で使用した日本の1955年から2020年のデータを使い,インフレ率とマネーストトック増加率の平均を計算すると,標本の大きさはとなってしまう。これではどうしようもないので,国数を増やし,観測値を増やす必要がある。従って,ここでは世界経済のパネルデータを使い2変数の関係を探ることにする。

py4macroに含まれるworld-moneyというデータ・セットを使うが,その内容は次のコードで確認できる。

py4macro.data('world-money',description=1)
    | `iso`:          ISO国コード
    | `country`:      国名
    | `year`:         年
    | `income_group`: 世界銀行が定義する所得グループ
    |   * High income
    |   * Upper Middle income
    |   * Lower Middle income
    |   * Low income
    | `money`:        マネーストック(M1)
    | `deflator`:     GDPディフレーター
    |
    | * 年次データ
    |
    | <注意点>
    | * `money`と`deflator`が10年間以上連続で欠損値がない経済(177ヵ国)のみが含まれている。
    | * 国によって含まれるデータの`year`が異なる。
    | * 所得グループに関する情報
    |   https://datahelpdesk.worldbank.org/knowledgebase/articles/906519-world-bank-country-and-lending-groups
    |
    | <出典>
    | World Bank Development Indicators

国によってデータが使える期間が異なることに注意しよう。

まず変数worldにデータを割り当てる。

world = py4macro.data('world-money')
world.head()
iso country year income_group money deflator
0 ALB Albania 1994 Upper middle income 3.876590e+10 35.739368
1 ALB Albania 1995 Upper middle income 5.925260e+10 39.302820
2 ALB Albania 1996 Upper middle income 9.040510e+10 54.305537
3 ALB Albania 1997 Upper middle income 9.166720e+10 60.409306
4 ALB Albania 1998 Upper middle income 8.372854e+10 64.475001

いつも通り.info()を使って内容を確かめてみよう。

world.info()
<class 'pandas.core.frame.DataFrame'>
RangeIndex: 6584 entries, 0 to 6583
Data columns (total 6 columns):
 #   Column        Non-Null Count  Dtype  
---  ------        --------------  -----  
 0   iso           6584 non-null   object 
 1   country       6584 non-null   object 
 2   year          6584 non-null   int64  
 3   income_group  6584 non-null   object 
 4   money         6584 non-null   float64
 5   deflator      6584 non-null   float64
dtypes: float64(2), int64(1), object(3)
memory usage: 308.8+ KB

欠損値はないことが確認できる。

変化率の計算#

worldには経済ごとに10年以上に渡ってインフレ率とマネーストック増加率が含まれている。国ごとの変数の変化率を計算するには,以前紹介した.pivot()を使うことも可能だが,少し回りくどい計算になっている。ここでは異なる方法として.groupby()を紹介する。.groupby()はグループ内で何らかの計算をする際に非常に便利なメソッドである。次のステップに従って説明する。

  1. DataFramをどの変数でグループ化するかを指定し,グループ化計算用のオブジェクトを用意する。

    • ここでは経済ごとの平均を計算したいので,国iso(もしくはcountry)でグループ化する。

  2. グループ計算したい列を選ぶ。

    • ここではmoneydeflationとなる。

  3. どのような計算をしたいのかを指定する。

    • ここでは増加率なので.pct_change()を使う。

<ステップ1>
グループ化用のオブジェクトの作成するためにはDataFrameのメソッド.groupby()を使い,その引数にグループ化用の列を指定する。ここではworldisoでグループ化した変数world_groupに割り当てる。

world_group = world.groupby('iso')
world_group
<pandas.core.groupby.generic.DataFrameGroupBy object at 0x113c24f50>

DataFrameGroupBy objectが生成されたことを知らせるメッセージである。このオブジェクトはworld自体をグループ化計算用に変換したものであり,DataFrameのように.loc[]などのメソッドは用意されていないので注意しよう。

<ステップ2>
グループ計算したいのはmoneydeflatorである。同時に指定しても構わないが,ここでは一つずつ指定することにする。例としてmoneyを考えよう。列を指定するには[]を使う。

world_group['money']
<pandas.core.groupby.generic.SeriesGroupBy object at 0x113c57980>

SeriesGroupBy objectが生成されたことを知らせるメッセージである。ステップ1で生成されたDataFrameGroupBy objectからmoneyの箇所を取り出したグループ計算用オブジェクトである。Seriesとなっていることから分かるように,isoでグループ化され列money専用のグループ計算オブジェクトである。

<ステップ3>
グループ計算に平均を使いたいので,ステップ2のオブジェクトに.pct_change()をつか加えるだけである。

world_group['money'].pct_change()
0            NaN
1       0.528472
2       0.525758
3       0.013960
4      -0.086603
          ...   
6579    1.700756
6580   -0.538285
6581   -0.547881
6582    0.479342
6583    0.936070
Name: money, Length: 6584, dtype: float64

返されたのは国ごとに計算されたマネーストック増加率である。Seriesとして返されているが,行の並びはworldと同じである。従って,次のコードでマネーストック増加率の列をworldに追加できる。

world['money_growth'] = world_group['money'].pct_change()*100
world.head()
iso country year income_group money deflator money_growth
0 ALB Albania 1994 Upper middle income 3.876590e+10 35.739368 NaN
1 ALB Albania 1995 Upper middle income 5.925260e+10 39.302820 52.847219
2 ALB Albania 1996 Upper middle income 9.040510e+10 54.305537 52.575752
3 ALB Albania 1997 Upper middle income 9.166720e+10 60.409306 1.396050
4 ALB Albania 1998 Upper middle income 8.372854e+10 64.475001 -8.660303

money_growthが最後に追加さている。Albaniaの最初の行である0番目の行はNaNになっているが,増加率を計算する際に発生している。同様に,全ての国の最初の行にはNaNが入っている(確かめてみよう)。

次にインフレ率を計算する。次のコードは上で説明した手順を1行で書いている。

world['inflation'] = world_group['deflator'].pct_change()*100

試しに,日本のデータだけを抽出してみよう。

world.query('iso=="JPN"')
iso country year income_group money deflator money_growth inflation
3022 JPN Japan 1961 High income 4.102000e+12 24.337971 NaN NaN
3023 JPN Japan 1962 High income 6.090000e+12 25.360063 48.464164 4.199578
3024 JPN Japan 1963 High income 7.702000e+12 26.757522 26.469622 5.510469
3025 JPN Japan 1964 High income 8.704000e+12 28.183351 13.009608 5.328706
3026 JPN Japan 1965 High income 1.028700e+13 29.631090 18.187040 5.136857
3027 JPN Japan 1966 High income 1.171600e+13 31.104013 13.891319 4.970869
3028 JPN Japan 1967 High income 1.336900e+13 32.813300 14.108911 5.495390
3029 JPN Japan 1968 High income 1.515500e+13 34.427341 13.359264 4.918863
3030 JPN Japan 1969 High income 1.828200e+13 35.953642 20.633454 4.433399
3031 JPN Japan 1970 High income 2.421400e+13 44.213162 32.447216 22.972693
3032 JPN Japan 1971 High income 3.097200e+13 46.464210 27.909474 5.091352
3033 JPN Japan 1972 High income 3.857900e+13 49.068260 24.560894 5.604422
3034 JPN Japan 1973 High income 4.561100e+13 55.302577 18.227533 12.705396
3035 JPN Japan 1974 High income 5.106500e+13 66.811071 11.957642 20.810050
3036 JPN Japan 1975 High income 5.684700e+13 71.606396 11.322824 7.177441
3037 JPN Japan 1976 High income 6.381800e+13 77.340555 12.262740 8.007886
3038 JPN Japan 1977 High income 6.893500e+13 82.560351 8.018114 6.749107
3039 JPN Japan 1978 High income 7.797000e+13 86.361230 13.106550 4.603758
3040 JPN Japan 1979 High income 8.071200e+13 88.737573 3.516737 2.751631
3041 JPN Japan 1980 High income 7.930300e+13 93.563108 -1.745713 5.437984
3042 JPN Japan 1981 High income 8.678700e+13 96.301543 9.437222 2.926833
3043 JPN Japan 1982 High income 9.193400e+13 97.981975 5.930612 1.744969
3044 JPN Japan 1983 High income 9.198900e+13 98.908551 0.059826 0.945660
3045 JPN Japan 1984 High income 9.812700e+13 100.365852 6.672537 1.473382
3046 JPN Japan 1985 High income 1.010060e+14 101.630611 2.933953 1.260150
3047 JPN Japan 1986 High income 1.112170e+14 103.269102 10.109300 1.612202
3048 JPN Japan 1987 High income 1.166330e+14 103.106047 4.869759 -0.157894
3049 JPN Japan 1988 High income 1.262110e+14 103.750762 8.212084 0.625293
3050 JPN Japan 1989 High income 1.299050e+14 105.938752 2.926845 2.108890
3051 JPN Japan 1990 High income 1.350370e+14 108.698779 3.950579 2.605305
3052 JPN Japan 1991 High income 1.428830e+14 111.881314 5.810259 2.927848
3053 JPN Japan 1992 High income 1.477900e+14 113.745972 3.434278 1.666639
3054 JPN Japan 1993 High income 1.575810e+14 114.392473 6.624941 0.568373
3055 JPN Japan 1994 High income 1.641370e+14 114.696203 4.160400 0.265515
3056 JPN Japan 1995 High income 1.907660e+14 114.084345 16.223642 -0.533460
3057 JPN Japan 1996 High income 2.087810e+14 113.517931 9.443507 -0.496487
3058 JPN Japan 1997 High income 2.498136e+14 114.089868 19.653417 0.503830
3059 JPN Japan 1998 High income 2.616490e+14 114.038391 4.737692 -0.045120
3060 JPN Japan 1999 High income 2.903745e+14 112.545067 10.978639 -1.309492
3061 JPN Japan 2000 High income 3.001829e+14 110.987797 3.377845 -1.383686
3062 JPN Japan 2001 High income 3.111430e+14 109.761918 3.651141 -1.104517
3063 JPN Japan 2002 High income 3.796386e+14 108.161276 22.014186 -1.458286
3064 JPN Japan 2003 High income 4.506541e+14 106.412328 18.706080 -1.616981
3065 JPN Japan 2004 High income 4.695480e+14 105.241010 4.192550 -1.100736
3066 JPN Japan 2005 High income 4.944894e+14 104.149203 5.311789 -1.037435
3067 JPN Japan 2006 High income 4.953890e+14 103.229172 0.181925 -0.883378
3068 JPN Japan 2007 High income 4.967105e+14 102.476136 0.266760 -0.729480
3069 JPN Japan 2008 High income 4.904771e+14 101.470952 -1.254936 -0.980895
3070 JPN Japan 2009 High income 4.971079e+14 100.850688 1.351908 -0.611273
3071 JPN Japan 2010 High income 5.133780e+14 98.939403 3.272951 -1.895164
3072 JPN Japan 2011 High income 5.412710e+14 97.282835 5.433229 -1.674326
3073 JPN Japan 2012 High income 5.607333e+14 96.541973 3.595666 -0.761555
3074 JPN Japan 2013 High income 5.914823e+14 96.220317 5.483712 -0.333177
3075 JPN Japan 2014 High income 6.203437e+14 97.899664 4.879504 1.745314

上で説明したように,列money_growthinflationの0番目の行の要素はNaNとなっている。

ハイパーインフレ#

ハイパーインフレの確固たる定義はないが,Mankiwの教科書「マクロ経済学」では年率50%以上と定義している。この定義に基づき,ハイパーインフレは観測値の何%を占めるかを計算してみよう。まずinflationNaNではない行の数を数える。

notna = world.loc[:,'inflation'].notna().sum()
notna
6407

inflationの値がNaNではない行数を確認した。次にinflationが50%以上の行数を数えてみよう。

hyper = len( world.query('inflation >= 50') )
hyper
300
print(f'観測値の{100*hyper/notna:.2f}%でハイパーインフレが発生している。')
観測値の4.68%でハイパーインフレが発生している。

次にinflationの上位5ヵ国を表示してみよう。

world.sort_values('inflation', ascending=False).head()
iso country year income_group money deflator money_growth inflation
1413 COD Congo, Dem. Rep. 1994 Low income 3725130.0 0.001219 5635.381062 26765.858252
4277 NIC Nicaragua 1988 Lower middle income 33480.0 0.000091 11673.429423 13611.634819
680 BOL Bolivia 1985 Lower middle income 111800000.0 17.094034 3587.821612 12338.622324
4719 PER Peru 1990 Upper middle income 707331500.0 3.608738 6724.820224 6261.239559
4279 NIC Nicaragua 1990 Lower middle income 52778530.0 0.223530 6286.714344 5016.107950

トップはコンゴ共和国(COD)の年率26,766%!しかし,この数字はあまりピンとこないかもしれないので,次式を使って一日のインフレ率に換算してみよう。

\[ (1+g_{{日}})^{365}=1+g_{\text{年}} \quad\Rightarrow\quad g_{{日}}=(1+g_{\text{年}})^{\frac{1}{365}}-1 \]

ここで\(g_{{年}}\)は年率のインフレ率であり,\(g_{{日}}\)は1日当たりのインフレ率。この式を使い1に当たりの平均インフレ率を計算してみる。

inflation_cod = world.query('(iso=="COD") & (year==1994)').loc[:,'inflation']

inflation_cod_day = 100*( 
    ( 1+inflation_cod/100 )**( 1/365 )-1 
)

inflation_cod_day
1413    1.544252
Name: inflation, dtype: float64

1日平均約1.54%のインフレ率となる。次に1ヶ月間のインフレ率を計算してみよう。

100*( 
    ( 1+inflation_cod/100 )**( 1/12 )-1 
)
1413    59.379842
Name: inflation, dtype: float64

月平均では60%近くのインフレ率となる。

1日平均約1.54%をもう少し身近に感じられるように,日本と比較してみよう。バブル景気崩壊直後の1995年と2023年の消費者物価指数(総合)は、それぞれ95.9105.6である(このページのデータを参照)。年平均(幾何平均)は次のようになる。

jp_inflation = 100 * ( (105.6 / 95.9)**( 1/(2023-1995) ) - 1 )
print(f'1995-2023年の年平均インフレ率(消費者物価指数):{jp_inflation:.2f}%')
1995-2023年の年平均インフレ率(消費者物価指数):0.34%

日本のインフレ率も非常に低いと言わざるを得ないが、日本の29年間の平均インフレ率よりも高い率で毎日インフレが発生するのは、大変な事だろうと想像に難しくないのではないだろうか。別の考え方として,物価が2倍になるには何日かかるかを考えてみよう。\(t\)日後に物価は2倍になるとすると,次式が成立する。

\[ 2=(1+g_{\text{日}})^t \quad\Rightarrow\quad t=\frac{\log(2)}{\log(1+g_{\text{日}})} \]

この式を使って\(t\)を計算してみよう。

np.log(2) / np.log( 1+inflation_cod_day/100 )
1413    45.231317
Name: inflation, dtype: float64

45日間で物価は2倍になることが分かる。例えば、10万円するPCやスマホが、45日後には20万円になっているという状況である。

プロット#

全てのデータを使って散布図をプロットしトレンドを計算してみる。

world.plot.scatter(x='money_growth', y='inflation')
pass
_images/8e7ee90cf6bb9b534af7bdf18eb47cac885b4d346cde7bea5f4e211af445e52f.png

横軸と縦軸の値(%)を確認してみると分かるが非常に大きい。ノイズの影響により変化が非常に激しいためである。トレンドのスロープを計算してみよう。

res_world = smf.ols('inflation ~ money_growth', data=world).fit()
print(f'標本の大きさ:{int(res_world.nobs)}')
print(f'調整済み決定係数:{res_world.rsquared_adj:.3f}')
res_world.summary().tables[1]
標本の大きさ:6407
調整済み決定係数:0.537
coef std err t P>|t| [0.025 0.975]
Intercept -9.6447 3.843 -2.510 0.012 -17.178 -2.112
money_growth 1.2802 0.015 86.259 0.000 1.251 1.309

トレンドのスロープは1.28であり,1に近いがノイズの影響が大きいようである。

この結果と比較したいのが,次のケースである。

  • それぞれの国でinflationmoney_growthの平均を計算し,その散布図をプロットするとともに傾きを計算する。

まず,それぞれの経済の2変数の平均を計算するが,一つ注意点がある。worldinflationmoney_growthがあるので,.mean()を使って平均を計算すれば良いと思うかもしれない。しかし.mean()は算術平均であり,計算したいのは増加率の平均なので可能であれば幾何平均を使うべきである。残念ながら,DataFrameには幾何平均のメソッドが良いされて良いないので,次のようにforループで計算することにする。

money_growth_mean_lst = []                   # 1
inflation_mean_lst = []                      # 2
iso_lst = []                                 # 3 
country_lst = []                             # 4
income_group_lst = []                        # 5

for c in world.loc[:,'iso'].unique():         # 6
    df = world.query('iso==@c').reset_index() # 7
    n = len(df)                               # 9
    
    money_growth_mean = 100*(                 # 9
        (df.loc[n-1,'money']/df.loc[0,'money'])**(1/(n-1))-1
    )
    inflation_mean = 100*(                    # 10
        (df.loc[n-1,'deflator']/df.loc[0,'deflator'])**(1/(n-1))-1
    )
                                              # 11
    money_growth_mean_lst.append(money_growth_mean)
    inflation_mean_lst.append(inflation_mean)
    iso_lst.append(c)
                                              # 12
    country_lst.append(df.loc[:,'country'].unique()[0])
    
                                              # 13
    income_group_lst.append(df.loc[:,'income_group'].unique()[0])
    
                                              # 14
world_mean = pd.DataFrame({'country':country_lst,
                           'income_group':income_group_lst,
                           'money_growth_mean':money_growth_mean_lst,
                           'inflation_mean':inflation_mean_lst,
                           'iso':iso_lst}).set_index('iso')

Tip

実は.groupby()使って幾何平均を計算することも可能である。例えば,次のコードでマネーストック増加率の幾何平均を計算できる。

from scipy.stats import gmean            # 1

world.groupby('iso')['money'].agg(gmean) # 2

簡単なコードで良いが,(1)にある関数を導入する必要があり,また(2)の.agg()を使う必要がある。上のコードはforループに慣れることを一つの目的としている。

平均でハイパーインフレが発生している国は何ヵ国なるのか計算してみよう。

hyper = ( world_mean.loc[:,'inflation_mean'] >= 50 ).sum()

print(f'{len(world_mean)}ヵ国中{hyper}ヵ国でハイパーインフレが発生している。')
177ヵ国中7ヵ国でハイパーインフレが発生している。

短期的なノイズの影響によってある年にハイパーインフレが発生する場合もあるだろう。しかしこの結果は,長期的にハイパーインフレに悩まされる国が存在することを示している。どのような国なのかを確認するために,インフレ率上位10ヵ国を表示してみよう。

world_mean.sort_values(by='inflation_mean', ascending=False).head(10)
country income_group money_growth_mean inflation_mean
iso
COD Congo, Dem. Rep. Low income 122.442962 127.704505
AGO Angola Lower middle income 108.457354 92.231798
BRA Brazil Upper middle income 92.023344 88.882771
ARG Argentina Upper middle income 79.169900 74.971614
NIC Nicaragua Lower middle income 67.774841 62.717663
BLR Belarus Upper middle income 65.667637 62.536094
UKR Ukraine Lower middle income 58.537270 61.867179
PER Peru Upper middle income 54.905117 48.305760
ARM Armenia Upper middle income 48.970412 46.680070
AZE Azerbaijan Upper middle income 52.949213 45.247656

やはり所得水準が比較的に低い国が入っている。

world_meanを使いクロスセクションのデータをプロットしてみよう。

ax_ = world_mean.plot.scatter(x='money_growth_mean', y='inflation_mean')
xpoints = ypoints = ax_.get_ylim()
ax_.plot(xpoints,ypoints,'r-', label='45度線')
ax_.set_title('平均インフレ率とマネーストトックの平均成長率', size='15')
ax_.legend()
pass
_images/cc3a6db40c0dac6aafe582b8badd8ed95e7011431f0996a1ac6eb834219ce822.png

綺麗に45度線上に並んでいる。国ごとに平均を計算することによって短期的なノイズが相殺され長期的な関係が浮かび上がっている。トレンド線の傾きを計算してみよう。

res_world_mean = smf.ols('inflation_mean ~ money_growth_mean', data=world_mean).fit()
print(f'標本の大きさ:{int(res_world_mean.nobs)}')
print(f'調整済み決定係数:{res_world_mean.rsquared_adj:.3f}')
print(res_world_mean.summary().tables[1])
標本の大きさ:177
調整済み決定係数:0.945
=====================================================================================
                        coef    std err          t      P>|t|      [0.025      0.975]
-------------------------------------------------------------------------------------
Intercept            -6.0805      0.461    -13.175      0.000      -6.991      -5.170
money_growth_mean     0.9847      0.018     54.876      0.000       0.949       1.020
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推定値は1に非常に近い。もし図の左下にある外れ値のように見える値(ジンバブエ)を省くとスロープ係数は0.997になる。長期的には式(113)が示すように,マネーストック増加率の1%上昇はインフレ率1%上昇につかがること示す結果である。「真のメカニズム」の一部が垣間見えるような気がしませんか。